Rendezvous in Istanbul

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イスタンブールにあるアタテュルク国際空港。
時間は15時。

到着ゲートに着いてすぐ、各機の到着状況を知らせる電光掲示板を眺める。
ドバイ発のEK123便は、定刻通りに到着している。

さすがに世界の中心とも言える位置にあるイスタンブールには、
他にもヨーロッパの各都市から、中東から、アフリカから、アジアから、
沢山の国から飛行機がやってくる。

到着ゲートには、沢山の人達。
皆それぞれの理由で、誰かを待っている。

ウェルカムボードを掲げている旅行会社の人も居れば、
数人でワイワイと友達の到着を待つ人、恋人を待つ女の子。
本当に色んな人が居る。

その中に、奥さんの到着を待っているであろう、1人のおじさん。
手にはバラの花が一輪。今か今かと、落ち着かない様子で。

この人はイスタンブールに単身赴任か何かで来てて、
奥さんと長期間会えておらず、今日久しぶりに会う。

―と勝手に妄想してた。

それぞれにそれぞれのストーリーがあり、ドラマがきっとある。

別れと再会というのは、
人生の中の素晴らしい瞬間のひとつだと思う。

飛行機が離陸する瞬間、窓から眺める景色。

機体が宙に浮いていく様子を見ていると、
「あぁ、私はここを離れてしまうんだ。」という思いが加速し、
ふと切なくなり、涙を流す。

誰しもこういう経験があるだろうし、すべきだと思う。

だからこそ、再会が嬉しく、
だからこそ、故郷の温かさが何よりも身にしみる。

空港にはそういうドラマが沢山あって、

自身にそういった経験がある人ならば、
出て行く人と見送る人、
帰ってきた人と、それを迎える人、

それぞれの感情に共感ができると思う。

私はただ、ここで一人一人の表情を見ているだけで、
心を揺さぶられる。

そして、今日、私はその中の一人。

時計を見ると15時30分。
まだきっと入国審査やらで時間が掛かっているんだろう。
ともかく私は、出てくる人、出てくる人、一人ずつ顔を確認しながら待った。

そしてちょうどもうすぐ16時になろうかという頃、ついに出てきた。

私が旅立って以来、ずっと日本で待っていた彼女が。

私は到着ゲートの一番中央に居たので、すぐに彼女も気づいた。

両手で右方向の通路を指差して、彼女を誘導したあと、
合流した通路で抱きしめる。

久々に握る彼女の小さな手は、
旅立つ前に握った時と何も変わらない、あの時のまま。

私はそれに小さな幸せを感じながら、トラムに乗り込んで、旧市街に向かった。

旅立つ前、彼女は「私、トルコに会いに行く。」って言ってた。

まぁ半分冗談みたいなもんかとも思っていたけれど、本当に彼女は来た。
休みの取り辛い仕事場に無理を言って、何とか1週間の休みを取ってくれた。

旅立つ前、彼女は「私、ドミトリーでも大丈夫だよ。」って言ってた。
長期旅行していると宿代ってのは、出費に直結する部分なので、
私はドミトリー(要するに複数人での相部屋)に泊まることが多いのだけど、
彼女もそれに合わせるつもりだったらしい。

彼女なりの気遣いだったんだろう。

最初は、そりゃ助かるなぁ、ぐらいに思ってた私だっけのだが、
まぁよく考えたら、久しぶりに会って、ドミトリーはねーな、と。

だから、前日は1日掛けて、ホテルを探しまくった。
日本からドバイ経由の長旅で疲れているだろうから、
バスタブのある部屋を探したのだが、これがなかなか無くて苦労した。
(基本的にシャワーのみの部屋ばっかりなので)

でも最終的には、かなりいい部屋が見つかり、そこを予約していた。
この旅で一番いい部屋だったと思う。

彼女も部屋を見て、無邪気にはしゃいでた。

彼女との出会いは、旅立つ2ヶ月前。
だから実際に2人で過ごした期間というのは、1ヶ月半ぐらいしかない。
会った回数だって、本当に数える程度だった。

だから正直なところ、自分が本当に彼女のことを好きなのか分からなかった。
本当に好きだと確信する前に、出発の日が来てしまった。

だから旅してる間、何回も考えてたし、悩んでたこともあった。

そして今日再会した。

私は彼女のことが好きだった。

私は部屋に荷物を置くなり、もう1度彼女を抱きしめた。

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