旅の始まり

ついにこの日がやってきた。

 

出発日の前日に荷物をパッキングしてたら、なぜか朝になっていた。

いま考えても何故そんなに準備がかかったのか分からない。

 

あれもこれも持っていかないとやっぱり不安。

でもあれを入れるとコレが入らないし、そもそも重くなるし。

そんな謎の不安に襲われていた雑魚キャラが私だった。

 

半年間お世話になった、友達と友達の嫁さん。

あまりにもその生活が楽しすぎて、別れるのが辛かった。

これから1年旅して、出会いと別れを繰り返すのに、出発前にこれで本当に大丈夫だろうか。

 

一睡もしていない状態で私は成田空港に向かった。

とても不思議な感覚だった。

 

いまからのこの人生には、何の予定も拘束もない。

その代わりに何の安心も補償もない。

 

全てが自己責任。

 

どちらかと言えば不安の方が大きい中、トランジットで韓国・インチョン空港に着いた。

 

インチョン空港は、とても広く綺麗な空港だった。だけど、私にはあまりにも広く感じた。

 

そういえば地元から東京に出て働くことになって、初めて新宿駅に行った時もそうだった。

あまりの大きさに私は飲み込まれそうになった。

 

思い返してみれば、私の海外旅行経験は修学旅行を除けば2回だけ。

それも友達数人と行ったもので、全員がおんぶにだっこ方式の、気楽なものだった。

 

初めて旅らしい旅をしている気がした。

 

お腹が減ってきたのに、どこで何を食べればいいかが分からなかった。

クレジットカードとATMを交互に何度も確かめながら、ATMの画面をのぞき込んだ。

 

次の飛行機に乗るまでの間、一体いくらぐらいの現金が必要なのかな?

後ろに人が並んだことに気づいて焦り、使うあてもない高額の韓国紙幣を引き出していた。

 

万事そんな調子だった。

 

第一目的地のフィリピン・セブ島に着いたのは夜中の0時ごろ。

セブ島の空港はインチョン空港とは比べものにならないぐらい簡素なもので、預け荷物受け取ったらすぐにタクシーの呼び込みが寄ってくるような規模の空港だった。

 

留学のコーディネーターの現地スタッフが迎えに来てくれるらしいが、心配で仕方なかった。もし来ていなかったらどうしよう。

フィリピンのタクシーの乗り方を調べておけばよかった。

 

この頃はスマホもWi-FiもSIM入れ替えも普及していなかったから、その場の対応力が問われる時代でもあった。

 

タクシーの運転手ばかりが目に入って、現地スタッフらしき人が一向に見当たらない。

不安で空港から外に出られず、ガランとした到着ロビーに1人だけ取り残されて動けずにいた。

 

それから15分ぐらいして、日本人らしき人がこちらを遠くから見ていたのが分かった。

「すみません、ちょっと道が混んでて遅れちゃって。」

理由は何でも良かった。私がその時どう返答したのかも覚えていない。

 

タクシーは、留学生向けの宿泊先へ直行し、宿の簡単な説明だけ受けて、その日はすぐに寝た。

 

 

 

翌朝、私の不安は消えていた。

 

体力の回復、住む場所の確保、サポートしてくれる人がいる安心。

雑魚キャラすぎるけど、これが現実。

 

私がフィリピンに来た目的は、語学留学。

以前友達がフィリピンで英語の留学をして、なかなか良かったとの話を聞いたので、今回世界一周をするにあたって、ぜひ行きたいと思って選んだ一カ国目。

 

世界にはもちろん英語が通じない国なんて山ほどあるけど、何だかんだいって英語は世界の共通語。

旅人同士の会話だってきっと英語主流なのだから、少しでも話せた方がきっと旅が楽しくなるはず。

英語は出発前の時点でも少しは話せる状態だったけど、本格的に旅が始まる前に少しでも耳と口を慣らしておきたい。

言語は結局、慣れの問題。

おそらく旅が始まってしまったら、聞き取れる部分もあれば、聞き取れない部分もあったりするはず。

たまに相手の言ってることが分かってないのに愛想笑いすることだってきっとある。

だけど、そんな中途半端な状態で日々をやりくりしても、上達しないだろうなと思っていた。

 

世界一周を、英語のための巨大な練習場だと考えたらどうだろう。

だとすれば、練習が実力に結びつくための最低限のスキルは最初から持っていた方がいいに決まってる。

この長い期間を利用して、遊びながら言語スキルもアップさせられたら最高だ。

そう思うとやる気しか湧いてこない。そんな初日だった。

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