自転車借りて、夕陽スポットとして有名なモンキーテンプルまで、
チャリチャリ走っていったら、
1人の女の子が近づいてきて、
「何かちょーだい。ペン、チューインガム、マネー。」
みたいなこと言ってたので、
「ごめんね、持ってないわ~。」って断ったのち、
モンキーテンプルの階段をひたすら上る。
数は数えてないけど、何百段かはあって、
しかも結構きつい傾斜になっているので、かなりしんどいです。
モンキーテンプルというだけあって、当然モンキー満載な感じなんですが、
そういうのも避けつつ、とにかく頂上を目指します。
上りきったら、乱れた呼吸を落ち着かせ、
スッと深呼吸して周りを見渡せば、
いままで自分を支配してきたものを全て開放してくれるような、
無限に続く美しい景色。
夕陽に照らされる岩山の数々。
ここには確かに岩しかない。だけど今はそれだけでいい。
夕陽が沈むのを見届け、久々の満足感を得た私は、
暗くなる前に宿に戻るべく、階段を急ぎ足で下り、
置いていた自転車のロックを外す。
そして気づいたのです。
あ、パンク!
いや、
っていうか、タイヤの栓が外されてるし!
これは明らかに人為的なもの。
テンション落ちるわ~って思いながら、
何とか宿まで戻ったあと、恐る恐る自転車をレンタル屋まで返しに言ったら、
「あー、モンキーテンプル行った?」とスタッフが一言。
「え、行ったけど?」と返すと、
「あそこに居る女の子に皆やられててね、有名なんだよ。」と言う。
あー!あの女の子かー! と気づいて思い返すと、
何もあげなかったから、腹いせにああいうことしたのかなぁと思ったり。
まぁでも不思議なもんで、旅を続けていると、
このぐらいのことは何とも思わなくなっている自分を発見します。
パンクかぁ、ま仕方ないなぁ。みたいに。
そんなことでいちいち腹立ててたら旅できないもんで、必然ですけどね。
あの女の子がそういう事をするのには必ず理由があるわけだし。
それは私がお金をあげなかったからかもしれないし、
あの子の家庭環境の問題なのかもしれないし、
それとももっと複雑な何かがあるのかもしれません。
あの子には自分の生まれる場所、環境、時代を選ぶことはできず、
ただ訳も分からず生を受け、ただただ生きてきたのだと思うのです。
人は誰でもそうだし、私だって、日本という恵まれた環境と、
必要なお金と倫理観を持った親の元に生まれたからこそ、
今こうして偉そうなことを言えるわけで。
私がもし、あの子と入れ替わっていたならば、
同じように自転車の栓を抜き続けていると思うのです。
それはあの子自身では止められないもの。
だから私はそれを責めない。
自転車の栓を抜く少女と、
モンキーテンプルに行きたかった私が、たまたま出会っただけ。
ただ、それだけの事実。
そこに善悪などないと思うのです。